「人づくり」とは、・・・今、私たちが暮らしている現代において、非常に大事な要件であり、また、我が島根県にとっても大きな課題である。その目的を達成するには、教育の在り方や方法論だけでは解決できない問題がある。

人は生まれた時から既に独自の個性を有し、自らが成長する過程の中で様々な人との出会い、周囲の自然環境、生活環境、教育の場を通じて、それぞれの固有の意志や様々な知恵,情を身に付けていく。

昔は、学校教育では学力がすべてに優先し、大学の選択が将来の方向を定めてしまうことが常識論となっていた。そのため、都市部の大企業に就職し、経済的に豊かな生活をすることが人生の幸せであるとの考え方が何よりも優先していた。親は一流企業での生活が子供の幸せと思い、子供の学力向上に力を注いだ。家庭生活の中でも、大学の選択が自分の将来を決定するということになるという親の思いが、子供たちの意識に自然に植え付けられていった。この傾向は、現在、多少変化しているが、残念なことに、今でも子供達にとって、過酷な受験競争は依然として続いている状況である。それほどの勉学をして合格し、夢を抱いて入った大学ではあるが、あこがれの大学では、学問等を探求する一部の学生を除いては、ほとんどが就職への通過点として利用しているのが実態である。

そこには、自らが抱いた夢や本当の幸せを見つけることができるでしょうか。

人づくりは、最初に家庭から始まるのであるが、家庭の中で例えば、素晴らしい島根の自然や豊かな人情の中で暮らす楽しさ、喜び、豊かさを、子供にもっと熱心に教えることが必要であると思う。そうしないとふるさとを守り育てようとする子供達はいなくなってしまう。

「人づくり」・・・それは、もっと器の大きな人材を創造していくものであると思う。人はそれぞれが、自らの成長に応じて、世界を広げ、地域、学校、社会の様々な場面に遭遇し成長をしていくのである。いま本当の大事なことは、大きな社会という循環型社会の中で世代を超えて、少しずつ社会の形成に大きな影響を及ぼしていく人づくりが求められる。つまり、人づくりが真に効果を挙げるためには、自発的・自主的に取り組む人々や社会で積極的な役割を果たそうとする人々との強い連携や協力が必要になる。

人づくりは、まず温かい愛情に満ちた家庭の教育から出発し、自らの個性を伸ばし、知恵を身に付け、社会の有用な人材として自ら積極的に、地域社会の持続的な形成活動に参加する人に育ってもらいたい。

そのことが、住む場所が地方部であっても、都市部であっても、自分自身がこれからの社会を形成していく個性として、個人の利益との調和を考え、個人の義務や責務を自覚して、豊かな気持ちを育みことができる豊かな環境を享受できる喜びを感じる人であってもらいたい。

そして、これからの社会は今まで以上に、真に豊かな愛に満ちた社会を創り上げることが望まれる時代となっている。

以上